千玄室さん
2025/08/30
裏千家15代家元、千玄室さんが8月14日に亡くなられました。
茶道に明るくない私ですが、14年前(2011年)の10月に母校の体育会航空部75周年記念事業で特別顧問として講演いただいたことから、親しみと尊敬の念を持っておりました。
文化勲章、紫綬褒章など数々の受賞歴と煌びやかな肩書を持ち、とても華やかな経歴の方です。
が、特攻隊員として殆どの仲間を見送り、出撃の直前に待機命令を受けて生き残った壮絶な経験は、生涯重い記憶として刻まれていたのです。
何故自分が生き残ったのか、忸怩たる思いを抱きながら相棒の俳優西村晃さんと慰安の旅を続けたそうです。
戦後アメリカ兵が家にやってきて、玄室さんの父親が点てたお茶を、正座して神妙な面持ちでいただいているのを見て茶道の持つ力を知り、一椀のお茶を持って世界を回ることを決意されました。
お茶を平和のために役立てようと、文字通り飛び回ったのです。
奇しくも8月16日、知覧特攻平和会館を訪ねる機会を得ました。
玄室さんは海軍なので基地は鹿屋でしたが、犠牲になられた若者達の写真や遺書が展示され、実物大の機体も見て、死の突撃へと飛び立った彼らとご遺族に思いを馳せました。
馬術部だった玄室さんが飛行機に乗ることになったのは戦争で馬が徴用されたからでした。
厳しい訓練の合間に仲間たちにふるまった一椀のお茶。
そのお茶を飲みながら、「俺が生きて帰ったら、お前んとこの本当の茶室でお茶を飲ましてくれや」と言って散華された若い命。
玄室さんの言葉や佇まいには、死と向き合ってきた過去から来る器の大きさや達観というものが感じられました。
茶人というより武人という言葉が相応しく思えました。心からご冥福をお祈り申し上げます。
(講演当時の名は千宗室さん)

